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リレーエッセイ 第5回 「あなたは悪くない」

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            「あなたは悪くない」
                     CAP歩歩代表 大久 栄

 心に問題を抱えている人の話を聞いたり書いたものを読むにつけ、私は「あなたが悪いんじゃない」と言いたい。子どもは親や関わってくれるおとなから、安心を充分にもらわなければ自信や自尊感情を持ちにくいのです。子育てはおとなからの目線で語られたり書かれることが多い。子どもの気持ちは?誰が子どもの気持ちを代弁してくれるのだろう。「子どもだから」と黙らされたり、「子どものくせに」と無視されたり、子どもの受難は昔も今もずっと続いている。
 20世紀半ばに米国の心理学者アブラハム・マズロー氏が発表した「5段階のニーズ」は、心がどのように成長するかを証明した論文で、今やマーケティングにも応用されている程活躍している。これは子どもを育てる上でとても役に立つと思うのだが、未だに一般的ではないようだ。暴力防止にも説得力があるので、私はCAPの大人向けワークショップで取り入れて説明している。
マズロー氏の「5段階のニーズ」とは、5段階の1段階目が生理的ニーズ。授乳やオムツ替え、抱っこ、愛情をこめて見つめてもらうことが必要。2段階目は安全欲求ともいい、安心を充分にもらうことが必要。日常的に暴力や暴言が家庭内にないこと、無視せず尊重してもらえること。3段階目は社会的欲求といい、人との良い関係性を必要とする。家庭の中での良好な尊重し合える人間関係が必要だと解釈している。この1~3段をおとなに与えてもらうことで、4段階目の自己肯定感・自己尊重が育つ。目から鱗ではないだろうか。安心の心は子ども自身に自然に芽生えるものではない。安心の少ない子ども時代を持つ人は、極端に不安や心配ごとが多いようだ。学習するにも安心な環境は多くのことを吸収できる。授業が楽しいと好き嫌いに関係なくその科目の成績が伸びる。そんな経験はないだろうか。安心な気持ちが能力を伸ばす証だと思う。
心に問題を抱えた人には、親の育児のつまずきがないだろうか。親や養育するおとなが子どもに充分に安心を与えられていない結果、あなたが自信をもてなかったり、人を警戒したり信じられなかったりするのは、「あなたが悪いのではない」のです。
もし、この5段階のニ-ズのどこでつまずいているのかがわかれば、そこにアプロ-チすることで楽になるでしょう。それには信頼できる人が必要で、話をしっかり聞いてくれる人やカウンセラ-がいると良い。きっと近くにいるはず。まだまだ社会は捨てたものじゃないよ。



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