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リレーエッセイ 第4回 「人間の平等ついて」 

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剣客商売」第5シリーズ 第6話~その日の三冬~
「人間の平等ついて」     いきいきFネット秋田 高田生子

テレビドラマ藤田まこと主演「剣客商売」は、池波正太郎原作によるもので
江戸時代の武家社会から庶民の暮らしぶりまでさまざまな人間模様が描かれている。BSフジ7月27日再放送~その日の三冬~では、女剣士・三冬
(寺島しのぶ)にスポットがあてられていたのでモニターしてみた。
三冬は老中田沼意次の娘で、今は剣客秋山小兵衛(藤田まこと)の長男秋山
大治郎(山口馬木也)の妻となっている。時は江戸時代。身分制度の縛りの厳しい時代である。ある日、三冬は亡き母の墓参りの途中、5年ぶりにかつての道場仲間の岩田勘助(本田博太郎)に会った。勘助の身分は低く、とある旗本に仕える足軽だった。三冬とは同じ道場で腕を磨きあう間柄で勘助はかなりの腕前だったが、誰からも相手にされないほど醜い容姿の男だった。しかし、三冬だけは常に優しい言葉をかけ、剣の相手もしていた。勘助は今、角倉という旗本に仕えているという。その角倉家の一人娘お絹におりしも良縁が持ち上がっていたがお絹には恋仲の青木丹三郎という侍がいた。そこでお絹は別れの逢引きをすると、丹三郎は別れ話に納得せずお絹に襲いかかる。止めに入った勘助は丹三郎に怪我を負わせてしまう。青木の家は同じ旗本でも角倉家より格上である。翌日勘助は主人角倉伊織の「詫び状」を持って青木家に詫びに行くが昨日の主人の優しい言葉とは裏腹に「下手人を差し出すから好きなようにしてよい」というものだった。勘助は主人の理不尽な扱いに逆上し、青木の家来を斬りつけ通行人の女を人質に空き家に立て籠もる。そこで説得に入ったのが三冬である。秋山小兵衛
夫秋山大治郎が見守る中、三冬は勘助の血と泥に汚れた手を我が手で包み「勘助その女を放してやりなさい」と静かに訴える。勘助はこれ迄も周囲の侍たちに人扱いすらされず蔑まされてばかりだったが、それでも三冬だけはいつも優しく寄り添うように接してくれた。「勘助、人は皆、平等よ」。鬼畜となって逆上していた勘助であったが我に重ねられた三冬の柔らかい手、頬に伝う涙に勘助の心は次第に真人間に戻っていく。濁り切った武家社会の泥沼に沈んでゆく勘助の自害の姿に三冬の涙は止めどなく流れ落ちる。
 三冬と勘助の心の通い合いは何だったのか。「人間(ひと)は皆、平等よ」
と三冬に言わせたのは脚本の古田求であろう。身分の上下関係や、容姿に関わらず人間は皆平等でなければならないと。勘助は泣きながら三冬に「もう一度お目にかかれて思い残すことはござりませぬ」と言い、自害して果てる。自分を絶えず人間として扱ってくれた三冬には恋情だけでなく、人間同士の心の交い合いがあったから三冬の言葉を受け止めて自害して行ったのだろう。
   
2004・3・9フジテレビ系列放送  原作・池波正太郎 監督・井上昭
脚本・古田求  制作・フジテレビ 松竹   2023・7・27再放送

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